なぜ駅のプラットフォームで雑誌用ゴミ箱を漁るサラリーマンがこうも嫌なのかといえば、それはたぶん、衆人環視の中でそれをやれる人間などろくなものではない、という確信に基づくものだろう。本人がどう言い訳したとしても、その人格の醜さは、生活の他の側面にも必ず現れ出てくる。そしてその醜さは、往々にして、関わる人間の世界をも手狭にするのだ。
僕の世界を、これ以上狭めないでほしい。彼はうめくようにそう思った。
君の醜さを、今さらどうこうしようとは思わない。歳も歳だし、もう手遅れだ。ただ君の存在は、僕にとって邪魔だ。君は、有害なのだ……。
はっとして彼は我に帰り、左手に絡ませた古文の単語カードに目を落とした。太い縁の眼鏡をかけたサラリーマンが、うさんくさい顔をして睨み返してくるのがわかった。
少年犯罪者
(03/8/9)