かつての悩みと今の体調について
この夏の間に初めての人と会うかもしれない事情があって、いろんなことを考えたり思い出したりしている。
このところ、僕はだいぶ人と会う機会も増えたし、以前に比べればだいぶ動けている。でも考えてみれば、ほんとに身近な人は僕と同様に身体の悪い人であって、フルタイムで働いたりできるような知り合いは突き詰めればみんな「友達の友達」という段階だ。
何がそうさせているのかといえばもちろん、僕自身があまり動ける状態にないという相変わらずな問題がまず大きい。それは当然としても、加えて「身体の問題について誰に、どこまで説明するべきなのか?」というなかなか踏ん切りの付かない悩みもある。
たとえば7年の長きに及んだ大学時代(心身ともにギリギリに追い込まれる中で後半は休学を繰り返した)、僕はそれでだいぶ苦い思いを経験した。
中学の後半から心身の問題に苦しむようになっていた僕は、高校を四苦八苦して卒業した後、意識的に1年間の浪人生活を選んだ。でも状況は何も変わらなかった。ウツウツとして時間の重さに耐えていたとき、某シンガーソングライターの存在を知って衝撃を受けて、音楽を始めること、それに「意識的に人中に出ていく」ことを決断した。
そういう中で大学生活が始まったわけだけど、現実は思っていた以上に厳しかった。
まず第1に、無理矢理でも人中に出ていけば心身の問題のある程度はおのずと氷解して、気にならなくなっていくかもしれない、というたぐいの期待は100%雲散霧消した。(笑)本当に、何一つプラスの方向には変わってくれなかった。
それでも僕は軽音サークルに参加し、ゼミに参加し、バイトを始め、自動車教習所に通い、などを次から次へと試みていった・・・そしてその大半は裏目に出た。
たとえば、僕は未だにいわゆるまっとうな就職というものを経験していないけど、「就職しない」という決定をしたのは大学3年で家庭教師のアルバイトを1年務め、その中でさんざん身体の問題に苦しんだ経験からだ。そのときは体力のなさというより僕のちょっとした持病の存在が大きなネックだったんだけど、今は深くは触れない。
ただそういう中で、かろうじての白眉というか、「大学に行ってみてよかった」と今もって僕に思わせてくれているのは、軽音サークルの存在だった。
ジャズ系の実力派サークルがロック系へとシフトしながらカラーを見失い崩れていく、まさにその過渡的な爛熟期の混沌とした魅力と、それが急速に色褪せていく姿とを僕は目の当たりにした。いろんな才能がいた(僕のギターやキーボードを聴いてそのレベルを推し量ってはいけない!)し、人間的にも面白い人は本当に多かったと思う。
でもだからこそ、僕はそのサークルの中でも居場所を作れない自分に深く深く失望することになった。
何が悪かったか?
まず1ついえることは、僕が最初の1年半ばかり、周りの人々から浮きまくっていたということだ。(笑)なんとなく人間性を認めてもらえるようになったのはそれ以降だった・・・でもそれはしょうがない。長らく持病に苦しんで、人との深い関わりを持てずにいた僕は、万事がちぐはぐだったに違いないから。
ただその時期をどうにか乗り越えたとき、僕を待っていたのは「遠慮がちな誘い」だった。仲間内での温泉旅行の企画とか、ちょっと知り合いのバンドの演奏を聴きに行くとかの機会に声がかかるようになったのだ。そして問題はそのときに生じた。
僕のサークル参加は、大学の授業を数コマ消化した後のいわば放課後を使ってのものだったわけだけど、そのころには僕の顔色は疲労でもう白くなり、頭痛や鳩尾~心臓の痛みが生じてることなどしょっちゅうだったのだ。
持ち込まれる計画はどれもこれも、疲労の限界ギリギリでその場にいる僕にとっては想像もつかないような・・・なんとも溜め息の出るしろものばかりだった。なぜみんな大丈夫なんだろう?どこが僕とそこまで違うんだろう?
当時の僕はまだまだおめでたいことに、自分の根本的な体力のなさを直視してはいなくて、万事を精神的な問題に帰する所が強かったけど、まさに精神力でサークルに参加して、練習の合間には力尽きて学食の雑踏の中でテーブルに突っ伏して熟睡していたりした僕(先輩ギタリストのKさんは「よくあんなところで眠れるね」と呆れていたものだ)にとって、「皆さん一体、この上さらにどこへ行こうというのか?」という抵抗感はどうにもならない高すぎるハードルだった。
一体全体、どうして参加できるだろう?今、この場でサークルの練習に参加していること自体が、僕にとって限界的な努力の結晶のようなものなのに。
結局、やんわりと見送る、ということばかりが増えていった。そういう人間がたまに参加したところで、いつもいる人とは空気が違う。少し距離を置いた仲間、という位置が僕という奇妙なキャラクターの落ち着きどころになった。
僕はもちろん、満足してはいなかった。その位置をどうしたら打破できるのだろう、ここから前に進めるのだろう、と考えた。身体の問題をカミングアウトする、という選択肢は絶えず頭の隅にちらついていたけど、精神的にあまりにも抵抗が強かった。
時間はずるずると過ぎ、やがて大学5年生になったころ、僕は比較的信頼していたベーシストの友人に、初めて身体の問題を匂わせてみた。残念ながら、そのときの反応は実に味気ないものだった。彼は苦笑し、二言三言ピーターパン症候群的な内容を匂わせて、まずはやってみることだ、というたぐいの陳腐な台詞を口にした。
僕は曖昧な微笑を浮かべつつ、彼のその方面への理解力について密かに見切りをつけた。そしてそれだけのことだった。
その後・・・僕の人間関係は、長い時間と幸運に助けられながら、多少なりとも好転してはきた。ただそれは、常に身体の問題とリンクしながら進んできたのも事実だ。
身体の悪い人同士だと、互いの問題がある程度想像がつくことも多いし、何より僕の出会ってきた身体の悪い人たち(主に某2名の尊敬する友人を念頭にこれを書いています)は、体力においてすら僕と大同小異という人々だったから。相手にとって無理のない計画は常に僕にとっても無理がない、という案配で、心身ともに非常に楽だったことは認めざるを得ない。
ここから先に進むということをどう考えていくのか、というのが今の課題だ。大学時代、身体の問題をひた隠しにして無理を重ね、結局せっかくのサークルの環境すら生かし切れなかった失敗はもう繰り返したくはない。身体の問題をオープンにすることにリスクが付きまとうのは間違いないけど、ヒントすら与えまいとがんばった結果、ヒント1つあれば僕を読み解いてくれたかもしれない人たちをすら遠ざけた時期を再現するのはごめんだ。
身体の問題は今も深刻だし、それを知らない人からすれば僕はただの「ノリの悪い出不精な人」になってしまいかねない。それじゃあダメなのだ。
ひとつには、僕はいずれ、これを読んでくれている人たちとも会うかもしれない。そういうときに、この人は身体が悪いらしい、となんとなく知っといてもらえるだけでも違うと思うんだよね。(笑)
たとえば飲み会はキライじゃないけど2次会・3次会に付き合わされるとなったらゲンナリする、というサラリーマンなんかなら、がんばれば少しは想像がつくと思うよ。朝9時に出勤して、午後2時ごろにはもうその状態になっている同僚がいると思えばいい。(笑)実際、高校時代の僕の「放課後」なんか、まさにそういう状態だったんだから。
たとえば、休みの日に買い物に行く。そういうときに何を考えるか。
僕は消耗を防ぐことを考えます。考えざるを得ない。
下手に売り場で逡巡したまま1時間も過ごそうものなら、僕は疲労で自分の顔色が白くなり、足が前に出なくなり、頭も回らなくなって、しかもそういう疲労はちょっと休んだくらいでは回復しないことを知っている。結果、その日1日がその時点で空しくなってしまうということを、無数の苦い実体験から知っている。
繰り返すまい、と思えば、楽しみたければ、未然に防ぐ工夫をするしか方法がない。
わが怪しげな東洋医学者は最近、僕の体力が実際にはある程度改善しているのではないか、と言うようになってきている。自宅での労働時間が何はともあれ伸びている、というのがちょっとシンプルすぎるその理由だ。
「体感的に楽でない」とか、「絶えず疲労感が強い」という問題、あるいは頭痛や鳩尾の痛みという問題は末梢神経の状態まで含めた「感じ方」に左右される部分だが、労働時間はそうではない、と言うんだよね彼は。(笑)あながちツジツマの合わない話でもないから、僕も半信半疑だけどまるっきり否定はしきれない。
もちろん、それでも身体に問題があるから不快になり、疲労感も出るわけだから、まだまだ治療は前途遼遠というのが彼との間の共通認識だけど、もし万一体力そのものは向上しているんだとしたら、僕はそれを使いたい。
実際に今日も仕事もしたしギターも弾いた。最近はトライセラトップスのベストアルバムのコード進行を一通り聴き取りする、という課題をやっていて、今日はわりと好きな「Groove Walk」という曲。そういうコードの聴き取りも含め、もう何ヶ月も音楽理論的なことを軸に取り組んできているわけだけど、その効果がいちばん出ているのは笑止なことにギターの演奏技術だったりする。(笑)
文字通り初心者レベルの話には違いないけど、今の僕は1ヶ月前の僕より間違いなく、ギターが上手。こういうことは、僕の過去のギター歴の中では1度としてなかったことなのです。
何をしても1ミリも伸びなかったものが、ややこしい音楽理論に否応なく集中しながら必死で指板と睨めっこする中でわずかだけど伸びてきている。
こういうことがうれしい、と思う。この手が動いて、音楽が楽しめるのなら、体力の許す限りなんでもする。だから今は音楽理論を勉強している。
そして明日は友達と江ノ島の花火大会を見に行く予定です。
雨が降りそうな気配だけどね。(笑)


