2009年夏 箱根(後編)
箱根での2日目(8月8日)は朝10時にチェックアウトという殺人的な(僕にとって)スケジュールであったので9時半に叩き起こされ起きた。友人の友人ことHさん他1名はその朝早くに出発したらしい。あいさつするために僕たちの部屋を訪れてノックしてくれたらしいんだけど、あいにく2人とも眠りが深かったようだ。
早送りのように身支度をして10時ギリギリに廊下に飛び出すと、斜め向かいのHさんの部屋から布団なんかが引っ張り出されていて、室内は掃除の真っ最中。ああ行っちゃったんだなあ、と思った。
そして我々は近くのデイリーヤマザキで申し訳程度の朝としてサンドイッチとミルクティーを買い込み、やがてやってきたバスに乗って芦ノ湖に向けて出発した。
バスは坂を登ってわが旅館の脇を通り過ぎ、そのままうねうねと蛇行を繰り返しつつ昇り続けてやがて峠も過ぎ、下り始めた。下りが始まると意外と早く芦ノ湖だった。それでも運賃が1000円近くに達していたのにはビックリし、かつ少々凹んだ。
山道の運転は大変そうだし、燃料も食うからそうなるんだろうな。
芦ノ湖に着いたからといって、僕が漠然と思い描いていたのは足漕ぎボートに乗ることくらいでノープランも同然だった。しかも足漕ぎボートは30分1500円というボッタクリ価格であったので、我々2人(少)から総スカンを食った。
あんまり金のことばかりいいたくもないけど、燃料代もない、メインテナンスもそこまで大変じゃないはずの足漕ぎボートで暴利をむさぼっているのは誰だ?(笑)
そんなこんなでしばらくはボンヤリと湖畔に座り込み、高地の激しい日射に肌をジリジリと焼かれながら、2人そろって「何しに来たんだろう?」などと考えていた。やがて立ち上がり、付近の散策を開始したものの、延々歩いて元の場所に帰っちゃったりして、やがて疲れ果て、また呆然と湖畔に座る・・・。
その間、交わした会話といったら。
「遭難してるね僕たち」
「そういわざるを得ないね」
この時間はけっこう長かった。(汗)湖ってものはちょっとした異空間で、場所柄としては面白いんだけど、だからって何かやることがあるというたぐいの場所じゃないのだ。
それでもはるばる芦ノ湖まで来て何もしないというのはシャクだ、ということで意地汚い我々は再度の探索を開始した。先ほど空しく往復した道を、はるばるもう一度歩いていって、今回はさらに遠くまで行ってみよう、という企画だ。
結果的に、旅慣れたこの友人の破れかぶれな発案がこの日1日を救ってくれることになった。もっともらしい土産物店や飲食店が並ぶ通りをふらふらになりながら歩いて歩いて、さらに歩いたその先に(大げさ)、我々が存在すら知らなかったその名も「箱根神社」というヤシロがあったのだ。
いや、湖畔で呆然と座り込んでいたときも、たしかにその存在を匂わせるものはあった。というか、まさに右斜め対岸、といったロケーションの湖畔に、水の中からにょきっと生えている鳥居があるのには2人とも気づいていて、足漕ぎボートに乗ったら絶対にあれを目指すね、しかしたどり着いたらたどり着いたでそれからどうしたもんか迷うだろうな、時間も中途半端に余るだろうし、なんていうとりとめもない会話を交わしていたくらいだったのだ。
湖畔に座り込んでいたとき、斜め対岸の鳥居ははるか遠くにあるように見えて、歩いて行くにはあまりにも酷な場所のように思えた。でも今や、目の前にある「箱根神社」の石柱は当然、これがあの湖畔の奇妙な鳥居を有する神社そのものであろうことを想像させた。
「間違いないだろ」と友人が言った。「えー、でも僕たちそんなに歩いてきたかなあ?あの鳥居があるにしては近すぎない?」僕は湖の方を振り返ってみた。さきほどまで座っていた石段を探したけどとっさに見つからなくて、湖畔づたいにぐるっと首を巡らさなければならなかった。
「僕らはけっこう歩いてきたんだよ!」と友人は(憤然と)言った。
鳥居をくぐると、そこから先はけっこう長い並木道が続いた。左手は大ぶりな杉木立一重の向こうに車道があって、そのさらに向こうには芦ノ湖の湖面が見える。一方、右手はうっそうとした森。
びっくりするほど涼しかった。足もとはアスファルトでしっかり舗装された現代的な神社なのに、左右の木立が「本物の」森、ないしその名残りであるというだけで、こんなにも涼しくなるものかと思った。
土壌の質や、そこに蓄えられている湿度なんかの加減なんだろうな。暑さのあまり萎えかけていた心が、急激に自然な落ち着きを取り戻していくのを感じたよ。
やがて小さな・・・空き地?に神社の建物が2,3散在する場所に出た。注連縄らしきもので括られた巨木があって実に見事だったけど、我々はその脇から見下ろす芦ノ湖の景色に気を取られていた。はるか階段を下っていったその先にしきりと反射している芦ノ湖の水面が見え、そしてその真正面には例の水面に立つ鳥居の姿があったのだ!
この鳥居はよかったよ。近くに来てみる前は、遠くから見てるといい感じでも、意外とそばから見ればチャチいんじゃないかと懸念してたけど(笑)、ぜんぜんそんなことなかった。周囲に巡らされた遊歩道や階段の感じも実によくて、やたらと写真を撮ってしまった。
鳥居の写真に写っているちっちゃな人影は、実は僕自身。
そして・・・結局のところ、この水面の鳥居が箱根における2日目の唯一にして最大のハイライトになりました。「芦ノ湖にもちゃんと、足こぎボート以外にもいいところがあるんじゃん!なんでもっと有名じゃないんだろ?」というようなことを言い合って、芦ノ湖到着以来のモヤモヤを一掃した我々は、その後気分も新たに遅い昼食に向かったけど、そこではあまり運がよくなかった。(笑)
日記だけでもきれいごとで終わらせてしまおうかとも思ったけど、これは今後芦ノ湖方面に行く人のために書いておいた方がいいだろう。
これを読んでくれてる皆さんも憶えておくといいよ。箱根に行ったときは、どんなに神社に興味がなくても箱根神社に行くこと。そして、どんなにお腹が減っていても「腸Dめ屋」というソーセージショップと「アクアPッツァテラス」というイタリアンレストランにはご用心、ということ。
腸Dめ屋という店は、店に入って席に着くと、店員はカウンターの向こうで勝手に仕事していて何の対応もしません。(笑)声をかけてこないどころか、目さえ向けてこない。
そこで、「あれ、これはこっちから注文しに行かなきゃいけないのかな?」と思ってその旨の掲示のたぐいを探してみてもどこにも何も出ていない。結局、客はどうすればいいのかわからない。
それでも我々はカレーを妙に食いたい気分であったので、その店でカレーを、と道中ひたすらに思い詰めてたどり着いていたから、少々のことには目をつぶる気満々だった。でも、その後空調のことなんかで気まずい一幕なんかもあって、ああこの店はダメなんだ、とつくづくわかってしまったので食べずに店を去りました。(寂
当初、僕が母へのお土産もこの店で買おうかな、なんて言ってたのを気にした友人が、どうする?お土産だけでも買っていく?と聞いてくれたけど、買う気が失せた、とだけ返事して。(笑)
以て、この店の空気というものを察してもらえればだいたいハズレはないと思う。
しょうがなくカレーをあきらめた我々が向かったのは、次点として頭に置いてあったおシャレなテラス風(?)イタリアンレストラン、その名も「アクアPッツァテラス」。なにやら恵比寿に本店があるらしくて、そっちはおいしいのかもしれない。しかしここは、この芦ノ湖店は、えらく繁盛していて待たされたものの、味に関してはひどかった。ほんっとーに、ひどかった。
何が悪いかといえば、ほんとに単純な話。塩の使いすぎです、シェフ。アンタだよアンタ。(何
悪名高い梅○辰夫の料理ってこんな感じなのかな。(笑)
一口ピザを口に含むや、僕が妙な顔をして黙り込むのを見て、友人もいぶかしげに一口。そして顔を見合わせて、「塩辛い(笑)」「ピザの塩辛か?」・・・割り符を合わせたように一致した感想だった。
その後、友人の頼んだパスタも分けてもらったものの、「こっちも辛い(笑)」「ここのシェフは塩バカだな(笑)」と、悪口で盛り上がるほかしょうもない塩加減でした。
ああいうことってあるんだなあ。なんであんな店が大繁盛してるんだろう。おシャレな雰囲気さえあれば、そしてシェフがイタリアで修行していて恵比寿に本店があれば(←帰宅後に調べた)、それをもって「おいしい」と誤認してしまう人間がそこまで多いってことなんだろうか。ちょっと寒々としたものすら感じて、僕たちはなんだか暗くなってしまった。(笑)
いや実際、それくらい繁盛してたんだよ。広い店なのに、我々も30分くらい待たされてやっと席に着いたし。
これなら見かけ倒しということはあるまい、と思ったのに、あの体たらく。完全にブラックリスト。(笑)
気をつけた方がいいよ皆さん。芦ノ湖近辺でご飯にありつこうとするときには、上記2店は避けること!
その後、我々は遊覧船乗り場で売っていたマンゴーのソフトクリームもどきを食べてみたりしていたものの、その味もイマイチで、おまけに日焼け止めを使わずにいた僕の皮膚が急激に赤くなってきたこともあり(汗)、夕方早くに帰途につきました。二人とも、もうフラフラに疲れていたし、いいタイミングだったと思う。バスで箱根湯本の駅まで行って(やっぱり運賃はお高め)、小田原の駅で友人と別れ、一路自宅へ。こうして旅は終わりました。
箱根まで、自宅からほんの2時間もあれば行けてしまうということを今回初めて知った。(笑)あれならまた行けるなあ。
幸いなことに、今思い出してみると、やっぱり鮮明に浮かぶのはダメなレストランとかじゃなくて、湖畔から漠然と眺めた芦ノ湖と、箱根神社の風景だ。あれはよかった。
食事の運だけはからっきしなかったけど、総じて悪くない1日と、そして箱根での2日間でした。


